トップページ > 医師関連コラム「医師不足の負のスパイラル」

医師と言えども転職が当たり前の時代になってきました。その理由は様々ですがやはり、「これからのキャリアプランを考えて」、「年収をもう少し増やしたい」、「仕事に忙殺されていて、もう少し自分や家族との時間がほしい」と言った、誰もが納得できる理由が多いように感じます。一度しかない人生ですから、悔いのない生き方・働き方を選びたいものです。転職に悩んでいる先生方か、ぜひ素敵な仕事・職場にめぐり合えることを祈っております。

医師関連コラム

  • 医師不足の負のスパイラル

 前回のコラムでは、医師不足の原因として、「新たな技術を常に学ぶことができる」「自らのキャリア形成につながる」といった理由から都市部の大病院を希望する傾向をご案内しました。

 >>>深刻化する医師不足問題

 今回はそれに加えて、「医師の絶対数の不足」を指摘したいと思います。日本の医師数は人口千人当たり2.1人で、OECD加盟30カ国で見ても韓国、メキシコなどに次いで下から4番目に低く、医師数の絶対数が大きく不足しています。

 最近の医師国家試験合格者数のうち、女性の割合は35%を上回り、女性医師が増えてはいます。しかし結婚、出産、子育てと医療とを両立させる環境が整っていない場合が多く、現場に復帰できずに家庭に入ってしまうケースが多々見受けられます。医師不足を解消するためには、保育所の拡充、時差出勤、複数の医師が勤務を調整するジョブシェアなど、女性医師が働きやすい環境作りが急務となります。

 さらに医師不足の原因をあげるとすると、「診療科のアンバランスによる不足」も影響が大きいと考えます。産婦人科、産科医と小児科は特にその傾向が顕著で社会問題化しています。

 産婦人科は出産がいつ行われるかが分からないため、拘束時間が長く、緊張感を強いられます。また、帝王切開を受けた妊産婦が死亡し、手術を執刀した産婦人科の医師が業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕・起訴された「福島県立大野病院産科医逮捕事件」の影響もあるようです。ここ最近はようやく持ち直していますが、医師不足を解消するには程遠いようです。

 一方、小児科は、少子化により親が子どもの状態に非常に過敏になり、たとえ風邪でも「薬が合わないような気がする」「悪化しているのではないか」など、親が治療方針に口を出すケースが増えています。それだけならまだいいのですが、医師に暴言を吐いたり、無理な要求をつきつけたりするモンスターペイシェント化するケースもあり、対応が非常に難しくなっています。そのあたりが敬遠され、志望者が減少しているようです。

 こうした現象にさらに拍車をかけているのが新医師臨床研修制度です。これにより、2年間に複数の科を研修するスーパーローテート式の臨床研修が事実上義務づけられました。

 従来のストレート研修では、卒業後すぐに専攻科を決定し医局に入局していました。この制度では原則的には、たとえば消火器内科なら消火器内科のみ研修を受けることになります。専攻分野でのスキルはアップしますが、それ以外の分野には疎くなり、一般的な疾病を診る能力が落ちるという弊害が指摘されていたからです。ところが複数の現場を体験するスーパーローテート方式になったことで、ハードな科目の研修後、「自分には務まらない」と志望を変えてしまうケースが増えてしまいました。

 また、勤務医が過酷な労働条件に耐えかねて、退職と転職を繰りかえすフリーター医師になるケースも増えています。

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