トップページ > 医師を取り巻く問題「過酷労働が常態化する勤務医」

医師と言えども転職が当たり前の時代になってきました。その理由は様々ですがやはり、「これからのキャリアプランを考えて」、「年収をもう少し増やしたい」、「仕事に忙殺されていて、もう少し自分や家族との時間がほしい」と言った、誰もが納得できる理由が多いように感じます。一度しかない人生ですから、悔いのない生き方・働き方を選びたいものです。転職に悩んでいる先生方か、ぜひ素敵な仕事・職場にめぐり合えることを祈っております。

医師を取り巻く問題

  • 「過酷労働が常態化する勤務医」

医療関係者のみなさんのなかで、現在の医師の労働環境について、何の疑問も感じない、という人は少数派なはずです。

むしろ「このままでは将来、大変な事態になりかねない」と危機感を感じている、あるいは今まさに、「医療が崩壊しかねないギリギリの状態」に直面している方が少なくないのではないでしょうか。

昨今は、過労や体調不良などを理由に、職場を辞めていく医師が後を絶ちません。そして、残った医師たちに業務が集中して長時間労働に拍車がかかり、それがまた医師の健康を脅かすことになります。

医療機関の側でも、医師にとって厳しい働き方なのは認めるけれど、人材不足を補う有効な手立てもなく、過酷な業務を医師たちに担ってもらわなければ医療自体が成り立たない、そういうジレンマを抱えつつ日々診療を行っているところが多いでしょう。

しかし、このまま医師たちが心身を壊して職を離れていく状況が続けば、日本の医療は本当に崩壊してしまいます。医師を疲弊させてしまう要因を精査し、医師の働き方や労働環境を根本から見直していかなければ、この悪循環を断ち切ることはできません。

医療機関の種類や体制、診療科などによっても状況は異なりますが、総合的にみて勤務医は、そのほかの一般の職種に比べてまだまだ「労働環境が厳しいケースが多い」ことは事実です。

医師の労働環境については、大きな転換点になった象徴的な事件があります。それが1998年の関西医科大学の事件です。このときは関西医科大学付属滝井病院で研修を行っていた26歳の研修医が急性心筋梗塞を起こして死亡。これが大阪高裁の判決で過労死と認められ、労災が認定されました。

この研修医は通常勤務の後に宿直に入り、一睡もしないまま翌日も通常勤務をする38時間勤務が月に6回、1週間の労働時間が100時間を超える週もあったといいます。

しかも当時は、「研修医は病院が雇用する労働者ではなく、自主的に研修をして臨床を学ぶ立場であり、病院が支払っているのは報酬ではなく奨学金」という“常識”があり、こうした非人間的な労働が問題視されることなく、続けられてきた背景がありました。

しかし、一連の審議の末に労災が認定されたということは、研修医を労働者と捉え、労働環境を適正に管理しなかった大学側にも過失があると判断されたことを意味します。結果的に関西医科大学には、1億円近くの損害賠償が課せられました。

この事件をふまえ、研修医の過酷な働き方や低すぎる報酬を見直すべく、厚生労働省は2004年に新臨床研修制度を導入しています。近年は研修医を含む医師全体の、過労死や過労自殺に至るような働き方について改善を求める声が、医療界の内外から聞かれるようになっています。

最近では、あまりにも過酷な労働実態が告発された医療機関に対し、労働基準監督署の査察が入る例もあるようです。日本学術会議の報告でも、労働基準監督署が2008年に医療保険業の1386件の事業所を調べたところ、約8割にあたる1142件の事業所で、労働基準法の法律違反があったとしています。

なかでも注目されたのが勤務医の労働時間に関する違反と宿日直に関する勤務体制で、改善が図られない医療機関に対しては、労基署による監督指導が行われています。

医療機関の側も労災の賠償などを避ける意味でも、医師の労働環境にはこれまで以上に配慮しなければならないという風潮が、全体としては強まってきています。

しかし、医師のなかでも勤務医の労働環境は、現在もそれほど大きく改善されているとはいえません。

2011年に労働政策研究・研修機構が、全国の20床以上の病院に勤務する1万人以上の医師を対象に、勤務医の就労実態について調査をしています(「勤務医の就労実態と意識に関する調査」。以後、「勤務医の就労実態調査」とする)。

それによると、勤務医の1週間あたりの総労働時間は、全体の平均53.2時間で、週60時間を超える医師が全体の4割にも上っています。

労働基準法による労働者の法定労働時間は、週40時間です。1か月の時間外労働が合計80時間を超えると「過労死ライン」といわれます。週あたり20時間の時間外労働がある医師は、月の時間外労働にするとゆうに80時間を超えることになり、すでに過労死水準を上回っていることになります。

医師の長時間労働は、宿直や日直といった医療関係者に特有の勤務体制にも関係していますが、この調査では、全体の半数以上の医師が月1〜4回の宿直と月1〜2回の日直をこなしています。宿直翌日の勤務体制では、「通常通りの勤務」が86.2%でトップ。宿直明けが「午前中のみ勤務して午後から休み」(9.8%)や「一日休み」(2.5%)を引き離しています。

さらにオンコールのある働き方をしている医師が全体の9割弱に上り、年次有給休暇の取得でも、約半数の医師が「3日以下」と回答しています。十分な休みをとれないだけでなく、夜間や休日でも何かあれば出勤する態勢で、働き続けている医師が少なくないわけです。

診療科別にみると、宿直・日直やオンコールが多く、とくに過重な労働になりやすい傾向にあるのが、救急科や麻酔科、外科、産科・婦人科、小児科、呼吸器科・消化器科・循環器科といった診療科です。

<続く>

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