トップページ > 医師を取り巻く問題「仕事が好きだから起きる過剰適応」

医師と言えども転職が当たり前の時代になってきました。その理由は様々ですがやはり、「これからのキャリアプランを考えて」、「年収をもう少し増やしたい」、「仕事に忙殺されていて、もう少し自分や家族との時間がほしい」と言った、誰もが納得できる理由が多いように感じます。一度しかない人生ですから、悔いのない生き方・働き方を選びたいものです。転職に悩んでいる先生方か、ぜひ素敵な仕事・職場にめぐり合えることを祈っております。

医師を取り巻く問題

  • 「仕事が好きだから起きる過剰適応」

職業紹介の仕事を通じて多くの勤務医に接してきた経験からすると、勤務医の心身の健康や仕事へのモチベーションを損なう要因は、いくつかのパターンに集約できるように感じます。

おそらく働き盛りの医師が離職する原因としてもっとも多いのが、「異常な労働環境」でしょう。要するに、過労死につながるような長時間労働や、365日24時間オンコールで心身が休まる暇もないといった“異常に”過酷な労働環境を受け入れ、それを継続した結果、仕事が続けられなくなってしまうケースです。

しかしここで注目したいのは、なぜ勤務医がそうした非人間的な働き方を、黙々と続けてしまうのかという点です。

理由のひとつは、医師はもともと勤勉で、医師として少しでも向上したい、人や社会の役に立ちたいという強い思いをもった人たちです。そこで起こるのが、自分の健康や家庭生活を犠牲にしている自覚がないまま、激務にひたすら邁進してしまう「過剰適応」の問題です。

過剰適応とは、精神科や心療内科の領域ではよく知られていますが、人としての自然な欲求や快楽、個人的な感情を強く抑圧し、自分の意見や行動を周囲の環境や組織で求められる役割に過度に合わせてしまう状態を指します。

過剰適応の人は、周囲の人からひじように高い評価を受けることがよくあります。そのため、本人もその高評価を保ちたいがために、さらに懸命に頑張ってしまう悪循環に陥ります。

こうした状態が長く続くと、本人は自分の意思で果敢に働いていると思っていても、心身には強いストレスがかかっています。そして負荷がその人のストレス耐性を超えてしまうと、自律神経失調症やうつ病、循環器系・消化器系の疾患などを発症します。

過剰適応症候群になりやすい性格としては、責任感や使命感が強い、競争心が強く負けず嫌い、他者からの評価を気にする、秩序や他者への配慮を重んじる、といった特徴があります。これらは、多くの医師にそのまま当てはまるものです。

実際に医師のなかには、「休みたいのに休めない」と感じている人とはまた別に、「休みをとりたくない、ずっと仕事をしていたい」タイプの人もいます。

自律神経の研究で有名な順天堂大学医学部の小林弘幸教授も、著書のなかで、以前の自身の過剰適応ぶりを告白しています。

小林教授は順天堂大医学部を卒業し、イギリスやアイルランドで小児外科としてスキルを磨いた後に帰国し、同大学に勤務しますが、当時、「これだけは譲れないこだわり」として自分自身に課していたのが、どんなに忙しくても疲れていても「絶対に休まない」ことだったそうです。

仕事は多忙を極め、朝7時に病院に入り深夜0時過ぎまで働くのはざら。患者さんの生死を預かる手術もこなしながら、夏休みも何もなく勤務を続けていた、と小林教授は記しています。

さすがに30歳を超える頃から疲労感が強くなったそうですが、それでも仕事を嫌だと思うことはなかったといいます。家族もあきれるほど、仕事大好き人間だったからです。

しかし小林教授はある日曜の夜、「明日は仕事だ」と思うと、何ともいえない暗澹たる気持ちになっている自分に気づき、愕然とします。

小林教授は、あれほど大好きだった仕事、人一倍誇りをもっていた仕事に対して否定的な感情をもったことで、自分の感じていた不調が単なる肉体疲労を超えてしまっていることを、ようやく自覚したのです。

その後、自律神経バランスと心身への影響に注目するようになった小林教授は、心身を適切に休め、労める大切さを著作やメディア出演など、さまざまな機会で説いています。先の著書のなかでも「きちんと睡眠をとることは医者としての仕事のひとつ」とまで語っています。

仕事が大好きで、自ら休日や睡眠時間を削って働こうという熱心な医師ほど、こうした過剰適応に陥っていないか、ときどき点検してみる必要があるのではないでしょうか。

<続く>

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