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＜２８歳、女性、専門：内科（糖尿病内科）の例＞

西日本の国立大医学部卒業後、関東の病院で初期研修の後、医局人事による関東の大規模公立病院や中規模民間総合病院の糖尿病内科、一般内科で診療を行う。民間病院を退職。現在は、実家のある地元に戻り、健診業務を主とする機関で働きながら、併せて糖尿病診療を学べる民間病院でも働く。

「関東の大学医局員として、民間の総合病院の内科に派遣されていた経験があります。

その病院は臨床研修制度が変わって研修医が来なくなり、もともと人手が少なくて苦労していた病院でした。当時、内科部長含め内科医全員５０代で、２０代は私―人だけ。勤務を始めてすぐ、仕事を頼みやすい私に救急担当や外来など、何でも押し付けられるようになりました。

私はそのとき医師としては３年目でしたが、内科医としては１年目。まだまだ未熟なうえ専門は糖尿病なのに、心疾患であろうと消化器疾患であろうと、専門外でも指導医はいないままに主治医として診なければいけない状況でした。院内カンファレンスもなく、相談できる相手もおらず、ずっと不安な状態で診療を続けていました。

さらにオンコール体制も整備されておらず、当直医が内科医でないときは、深夜でも休日でも電話がかかってくるのが当たり前。休日にもかかわらず、私の担当患者さんが当直医の許可のもと外出し、帰ってこなくなったときも、「主治医だから」と何度も電話がかかってきて対応を迫られました。旅行当日に、オンコールでもないのに当直医が内科医ではないから対応できないと呼び出され、旅行に行けなくなったこともあります。

人手不足を補うためか、非常勤医師も多かったのですが、常勤医が関知しないところで非常勤医師が入院を決め、必要な検杏もされていない、病状もよくわからない患者さんが、勝手に主治医とされて入院していました。常勤医からは「非常勤の医師が無責任に入院患者を増やすのをやめてほしい」という訴えも多くありましたが、内科部長が事なかれ主義だったこともあり、状況は変わりませんでした。

そんな状況の中、私の父が急病に倒れました。

主治医によるとコミュニケーションがとれるのは、あと２週間から１か月との診断。私は上司に状況を説明し、実家が遠方で仕事のあとに父に会いに行くようなことはできなかったため、２週間休みをもらえないかと相談しました。

すると、内科部長は「認められない。危篤になったら帰すから」という返事。耳を疑いました。３日間頼み続けましたが、許可は得られませんでした。私はどうしても父と最期の時間を過ごしたかったので「それならクビにしてください」と頼み、ようやく２週間の休みをもらえました。

休暇をとって１週間したときに、病院に「ご迷惑をおかけしてすみません」と電話を入れたのですが、そこでも「休暇を認めたつもりはない。１日でも早く帰ってきなさい」と嫌味をいわれました。さらに「きみはどれだけ迷惑をかけているのか。そんなにわからないなら辞めてしまえばいい」とまでいわれ、そこで辞める決心をしました。

仕事を辞め、地元に戻り、医師の紹介会社に紹介していただいた医療機関で勤務を始めました。前職場との軋轢で疲弊していた私は、当初は常勤医になることさえも敬遠しつつありましたが、新しい職場では環境に恵まれ、再び常勤医として勤務する気力が戻りました。仕事をしながら父との時間を過ごし、心穏やかに父を看取ることができました。

現在は、おもに健診業務をしながら、同時に専門の糖尿病診療のスキルを磨くため、地元の糖尿病内科でも働き始めました。以前の病院とはまったく環境が異なり、優しく温かい上級医に囲まれながら心身ともにゆとりができ、充実した毎日です。

この経験を通して、以前は「医局人事の敷いたレールに乗って生きていくのが当然」と思っていたけれど、そうではないことに気づきました。自分のやりたい医療にたどり着くのに、道はひとつではない。「ここじゃないとだめ」と思う必要はありません。私は今、つぶれかけている同期の医師の「励ましがかり」もやっています。「私を見なよ、医局から離れても、仕事は何とでもなるよ」と。」

＜続く＞

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